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骸影の過去話

Twitter企画*フォロワーさんをダークキャラ化 からの創作短編小説。

※一部残酷な表現もありますので、苦手な方はご遠慮ください。






@haunted_666 “骸影の不死”
光を受け入れぬ暗黒髪、闇を呑み込んだかの様に澱んだ目の不死身の男。
両手は骸で触れると朽ちる為、封じられている。
臓物と手を収集家に奪われ一度死にしたが、闇の真理を識って蘇った。
自身の影を操り代わりの手を創る。
「残念だが、眠りも死も無い」








───闇から還ってきた、ある男の話をしよう。













彼は何処にでも居る青年だった。
手先器用な事が取り柄で家や修理や改造などを請け負う、いわゆる何でも屋をやっていた。

村長である人格者の父と料理屋を営む優しい母に恵まれ、幼馴染でもある可愛らしい恋人もいた。

ただひとつ違うのは、彼等が持つ力。


昔々、神々に認められ力を授かったという神子らはめざましい文明発展を遂げていった。
しかし、その内のひとりは身を潜む事を選んだ。
その者の力は “再生” 。
死にしたものを蘇らせる。
───“再生の神子” は案じた。
いつしか、この力は争いの元になるだろうと。確実に必然と。

そして再生の神子は信頼せり者たちと、外界から姿を消した。
やがて神々も欲を増した者たちに追われ、地上を去った。





気が遠くなるほどの遥か昔々の話である。
神から授かった力は親から子へと古き血から新たな血へと散らばり、薄まっていった。

再生の子孫も例外ではないが、外界から隠れ住んでいたため、血はまだ濃い。
枯れた花を咲かせたり、軽い怪我を治すことぐらいなら出来た。
また外界に出て、魔法によるものからだと偽りの呪文を唱えながら人々を癒す魔法使いとして活動する者もいた。

子孫たちは先代神子のように決して力を公にせず、あくまで慎ましい日々を過ごしていた。


彼もそうだが───何せ若者だ。
やはり外界が気になって、本を読み漁ったり、外界の近くまで出かけることもしばしばだった。
勿論、両親らには内緒である。気づかれているかもしれないが。
流石に共に行動することが多い幼馴染にはばれてしまったが、むしろ一緒に見に行きたいと言われる始末だった。

時折、通りかかる旅人に声をかけては話を聞くのが彼の一番の楽しみであった。


───そんなある日。
村を隠す樹海を出たところの道で、いつものように街を眺めていた彼に声をかける者がいた。

「やあ、君はどこの者だい?」

杖をついた白髪の痩せこけた老人だ。
一人で来たのではない。ここは山に囲まれている。
腰の悪い老人を誰かが馬車やらで連れてきたというところだろう。

「あ、ああ・・・あの森を越えたとこの村だよ」

嘘は言っていない。
ただ普通に行くと辿り着けないだけだ。

「へぇ、えらい辺鄙なとこだねぇ」

老人が着ている黒スーツはやけに清潔で、裾が金糸に縁取られている。
見るからにかなりの身分がある人のようだ。

「では、これには見覚えがあるかい?」

そう言って、見せてくれたのは。

「・・・っ!?」

それは。

「・・・は・・・?」

捲ったスボンから見える足。
皺ひとつない褐色の肌で、いかにも健康的だ。
痩せた老人にはやけに似つかわしい───若々しいそれ。
肌色も全く違うそれは明らかに他者のもの。

「ま・・・まさか」

左足首に紫花の刺青がある。
───それはあまりにも見慣れたもの。

「兄貴の・・・!?」

再生の力を持つ一族には、生まれつき体のどこかに紫花の刺青が刻まれている。
しかも色白が多い一族の中で、濃い褐色肌といえば一人しかいない。

十年ほど前に旅立った幼馴染の兄。
幼馴染は色白だが、今は亡き母が外から来た砂漠の人で濃い褐色肌だったそうだ。
風の噂では、立派な魔法使いとして世界を駆け回っていると聞いたが・・・。

「な、ぜ・・・?」

にやり、と老人はわらう。嗤う。
怖ろしく嫌な寒気が走り、彼は肩を震わせた。

「わしはのぅ、余命があと半年しかないと言われたのよ」

今の季節は夏に差し掛かり、暖かな気温か続いている。
だのに、背筋から酷く寒い。

「それが3年前での。おかげさまで何とかしぶとく生きとる」

眩暈を感じて視界が揺らぐ。
歪んだ笑みがますます歪んで見える。

「どうしてここまで生きていられるのかというとな、こやつの───」


老人はある国の領主。
魔術が優れたところで、領主自身も豊富な知識を備えていた。

もう90年近い時を過ごし、とうとう不治の病気に侵された領主。
しかし彼は足掻いた。死などいらぬと。
元から不死を夢見て、ありとあらゆる知識を集めていた。
極秘裏では人体実験にも手を出し、それでもかかった病気は不治と言われるだけに手強かった。
日が経つうちに領主は弱っていった。

諦めかけ、死を間近に感じ始めた時。

ひとりの魔法使いの男が訪れて来た。
病を治す事は出来ないが、和らげる事は出来ると。

噂で聞いた事があった。
優れた癒しの魔法使いが世界を回り、人々を癒していると。

領主は表向き評判が良い方だったので、心配した何人かが癒しの魔法使いに助けを求めたのだ。

早速辺りに呪文が響き渡り、領主は体が軽くなってくるのを感じた。
今までも同じような魔法使いに頼んでやらせていたが、効果は明らかに異なっていた。
軽くなるどころか、少しだが若返ったような感じなのだ。
これに驚愕した領主は魔法使いの癒しを調べるべく、あの手この手で城に留まらせた。

だがいつまで経っても進歩せず、ついに焦れた領主は魔法使いを直に調べる事にした。
もう余命を告げられた半年は過ぎていたが、生への凄まじい執着心ゆえに死を遅らせていた。

魔法使いは尋問されたが、誰でも使える魔法ですよと頑なに答えるばかり。
力がほんの少し強いだけだ、と。

観察眼の鋭い領主は信じなかった。
魔力が強いのは確かであったが、それだけで効果が増えるとは思えなかったからだ。
また呪文と魔力の間のずれを見破っていた。

さらに魔法使いは地下に監禁され、実験を受けさせられた。
まず口を封じられ、爪を剥ぎ取られた。
呪文によるものでないなら、口を封じていても治せるだろうと。

しかし、魔法使いは粘った。耐えた。堪えた。
全ての爪を剥ぎ取られ、耳を切り取られ、手を潰されても。
ただただひたすら沈黙を貫いた。
家族のために、友のために、決して漏らさなかった。

これに領主は感嘆しながらも、奥の手を出すことにした。

お前はもう寝ていい、体に聞くまでだと。

とても嫌な予感がした魔法使いは自害しようと舌を噛もうとしたものの、気絶させられて叶わず。

そのまま───生かされたまま、頭に孔をあけられた。
脳に入り込む異物。
魔法と科学が合わさった最新の針で、人の思考を読み取ることが出来た。
心深くまでいけるほど完全ではないが、問いかけられた事への思考などは解る。

領主は思いつくままに問いを重ね重ねて、為す術もない魔法使いの思考を読み取っていった。

いくつもの答えを総合し、ついに領主は見つけてしまった。理解してしまった。
遥か昔にいたという神子は実在し、その者達の力はまだ存続しているのだと。
その中で特に力があるのは再生で、皮肉にも外界から身を隠した事によって血縁もまだ濃いままであると。

こうして、領主は力を得た。
“再生” という素晴らしき力を。

また不死という夢に近づいた。
力を血を濃くすれば、それも叶うだろうと確信した。


「というわけでなぁ、有難く脚を頂いたのだよ。他のは実験のし過ぎて傷がついたままだが・・・ちゃんと部下につけてやったわい。リサイクルせねばの」

彼は言葉もなかった。
怒りなのか悲しみなのか、今までになく暗い暗い何がか沸き上がってくるのを感じていた。
何とも言えぬそれは沸々と勢いを増していき。

───俺は旅立ってしまうが、妹をよろしく頼むよ。


怒りに紫から赤へ煌めく目から、涙が止めどなく溢れ出し。


「き、さま───っ!」

やっと絞り出した声は掠れていて。

老人はまた嗤った。拳が迫っているというのに。


───そう、何も起こらなかった。

「がっ、は・・・っ」

意識が重い。
まるで魂が抜けたかのように、急激に身体が沈んでいく。

「く、くくくっ・・・こう見えても名のある魔法使いでな。なぁに、お前さんには痛みも感じさせんよ」

揺らいで見えなくなる、嘲笑。狂気。

底の無い暗黒が、彼の意識を呑み込んでゆく。

「お前さんのは・・・手が特に良さそうだのぅ。後は若々しい臓器ぐらいか・・・」




───彼の死は直ぐに知られ渡った。
但し、獣に襲われたものとして。

手や内臓を食い荒らされたような死骸を見つけたのは彼の幼馴染。
樹海の奥にある大樹近くに血まみれで横たわっていた。
うとうとと居眠りしてたのか、ぼーっとしていたのか、そこを大きな獣に襲われたのだろうとしか言いようがなかった。

村長の息子である彼は明るい性格で好かれていただけに、皆ショックを隠せなかった。
その夜は月も皆も沈み、静寂の中に微かな嗚咽が響き渡っていた。







死後の世界はこんななのか、と彼は茫然と闇の中をたゆたっていた。

そこには何も無い。あるのは黒だけ。
自身の体も見えず、闇だけが広がっている。

彼は聴こえていた。
両親と幼馴染の嘆きが。
悲哀に満ちた鎮魂歌が。

それでも何も出来なかった。
もう、死んでしまったのだから。
涙をこぼすことすらも出来ない。
思考でただただ悔やむだけ。

───兄貴もここにいるのだろうか。

辺りを見回しても、やはり暗黒があるだけで。

ここでずっとたゆたうしか出来ないのだろうか。
それではあまりにも苦し過ぎやしないか。

誰も───いないのだろうか。

声は出せないが、言葉を強く思い浮かべてみる。

───誰かいるのか?

何度かそうしていても、答えはなかった。

暫くして彼はふと気づく。
あんなに響いていた嘆きが止んだと。

眠ったのだろうか?
それとも時が大分経ったのだろうか。

そうやって、どのくらいぼうっとしていただろう。


その時。
不意に響き渡った───それは。

怒号。叫喚。悲鳴。

同時に流れ込む。
烈しい苦痛が止めどなく。

耐えようがないそれらに、彼は声無き叫びをあげた。

───まさか、と。


確かめる術はない。
だが確信していた、今まさに皆は俺と同じ目に合っているのだと。

歯痒かった。とてもとても。
何も出来ないことが苦しかった。とても。

俺はどうしてここにいるんだと幾ら叫んでも、応えは無い。
元から何も無いのだ───此処には。

闇だけが有りながら、何も無いのだ。


幼馴染の悲痛な声が聴こえた。
貴方達はいつか絶対に地獄に落ちるわ、と。

それから、すぐにあげられた呻き声。

身体を切り裂かれた激痛も途切れなく伝わってくる。

彼は嘆いた。泣いた。喚いた。

深く深く、闇よりも深い絶望に沈んだ。

いつしか何かも聴こえなくなったが、ずっと響いていた。残っていた。
両親や友、大切な人たちの悲鳴が脳髄にこびりついて消えなかった。

それでも闇は───静寂し続けた。

ただただ其処に居て、何も無く何も出来ず、ひたすら悲しかった。悔しかった。


その中。
気付くと身体の感覚があった。
ほんの微かにだが、無くした筈の鼓動を感じた。

血液がドクドクと流れる音。

彼は知らぬうちに理解した。

これは俺のではない、誰かのものだと。
それも幾つも───混ざっている。

流れ込む。幾つもの其れが。

其れが身体中に広がってゆく。
焼けるように熱くなってゆく。

血だ───みんなの。


同時に流れ込む幾つもの記憶。

赤子を抱き上げてむせび泣く母。
母と赤子への深い愛情を感じた。
嬉しそうにこちらへ手を伸ばす父。
こちらも溢れんばかりの愛情。

キラキラと目を輝かせた幼い男の子───ちっさい頃の俺だ───を見上げている。
何だか真っさらな気分。

誰かの記憶が蘇っては過ぎてゆく。

高原に青年が立っている。
俺だ───でも着たことの無い服だから若き父だろう───どこかぎこちなく微笑みながら、こちらに話しかけている。

───愛してる。

その言葉に応えるように溢れ出す歓喜。

場面がまた切り替わる。

見憶えのある暖炉部屋で老婆が編み物をしていた。
その傍らで揺れる籠の中に赤毛の赤子がいる。
赤毛は珍しく、数年前に重病で亡くなってしまった叔母さんしか記憶にない。
もしかして父の記憶だろうか。

───いいかい、我等には人にない力がある。
それを欲しがる奴等がいつかきっと来てしまうだろう。

争いを無くすのは難しいだろうねぇ。
全てが滅びるまで続くかもしれないし、正義があっても防げないということもある。

それでも、忘れてはいけないよ。
自ら血に染まってはいけない。
しっかりと己を保つんだよ───・・・。


屋根から村の人たちを見下ろしていた。
皆こちらを見て、指差したり慌てたりと忙しげだ。
幼馴染が危ないよと眉を顰めて飛び跳ねている。

そんな光景に俺は声を上げて笑った。顔面いっぱいに。



そうだ───まだ、やるべきことがある。
それをこなす為なら、どんな代償があろうと───・・・










突如に視界が光に覆われ、何度も瞬きした。
目に優しくほの明るい蝋燭の灯りだったが、ずっと暗い暗い中にいたせいか、やけに眩しい。

彼は身を起こそうとして、手が無い事に気付く。
仕方なくそのまま周囲を目を細めながら見回した。

───辺りは血の海へと化していた───かと思いきや。
地面の色そのままで変化といえば、あちこちの家の扉が壊れているぐらいだ。

葬式の真っ只中だったのだろう、彼の体は長方形の台上に横たわっていた。
その周囲に飾られた花は───全て枯れ切っており、今にも散りとなって崩れ落ちそうである。

沈黙を続ける彼はのそのそと足で台から降りた。

闇に時間の感覚は無い。
だから悲しみも憎しみも何かもが静かだ。
感じるのはひとつだけ。

───止めなくては、という思い。


人影はおろか死体も無い。
彼は知っていた。解っていた。
全て闇に呑まれたのだと。

その代わりに彼は蘇ったのだ。

空を見上げると、月も星も見えない曇り夜。
あちこちに灯された蝋燭だけが辺りを照らしている。

暫くそこで突っ立っていた彼は遠くで一際明るい所を見つけると、そこへ向かって歩き出した。ゆっくりと。







「皆殺ししてしまったが、材料は有り余るほど手に入れた・・・これで力を増やせるかのう」

髭を撫ぜつつ、正気を喪った笑みを浮かべる老人。
気のせいだろうか、手と内臓を奪った青年と出会った時よりも若々しく見えた。

老人の手には赤い液体がたっぷりと入った大瓶。
足元や机上にも無数に並んでいる。
中には顔丸ごとや足か目玉だけなどもあった。
血は勿論、気に入った部分も収集していったのだ。

周囲に満ちる鉄錆びた匂いにうっとりするように目を細めた老人。

そこで動きが止まった。

───いつの間にか、テント入り口に人影が見えている。

「・・・後処理が終わったか?」

背高い其れは、のっそりと頭から突っ込んで布を退けていく。
見間違いだろうか───その影の腕があるべきところが無い。

「・・・何奴だ?」

其れは、煤だらけになった裸の男。
やけに青白い肌は死人のよう。

「見た覚えのない奴だのう、何処ぞに隠れていた生き残りか?」

老人は余裕たっぷりに笑っている。
だが、次の瞬間には固まってしまった。

「───いや・・・昼に会ったばかりだ」

夜よりも濃い色の髪からこちらを見るは、澱んだもの。
何かもがごちゃ混ぜになりすぎて黒くなったかのような、其れは。
───まるで底の無い闇。

「昼? 今日の、だと」

昼にここら辺で出会った者は1人しかいない。

魔法で眠らせ、痛みひとつなく優しく、両肩から下を切り取り、内臓を全て取り出し、そしてめちゃくちゃにして───森の奥へ放っておいた、あの若き青年。
しかし彼の葬式が行われたらしく、台の上に焼け焦げて両腕の無い死骸と化していたのを見た筈だ。

「まずは・・・そうだな、腕を返してくれないか」

辺りによく響く低い声。
そこで老人はやっと気づいた、外がやけに静かな事に。
彼は無表情でこう告げた。

「ああ、お前だけだ」

両腕の無い男。
思い当たるのはやはり1人だけ。
他は若すぎたり、傷や皺だらけだったりで気に入る腕はなかった。

───今、ここに居る男はその彼と同人物だというのか?
だが茶髪ではないし短かったし、目も紫色だった。
顔つきは似てるような気もするが、全くの別人に見えた。

「貴様は・・・生き返ったのというのか?」

微かながら後退りする老人。

「再生の力が強かったか!? 素晴らしい!」

彼はずっと見つめ続けている。
興奮した笑みを浮かべた老人を。

「違う」

何の感情も見られなかった目に何かが灯り始めた。

「血が集った。俺のところへ、皆の血が」

そして、呑み込んだ。

「おお・・・素晴らしい! わしも血を───!」

老人の足元から青い光が迸り、彼に襲いかかる。
密かにかかれた魔法陣のそれは氷を生み出し、太腿や腹に刺さった。
わざと致命傷を避けたようだ。

しかし悲鳴も唸り声も何もひとつ聞こえなかった。
彼は自身を貫いた氷柱をただ見下ろす。
氷柱は直ぐに消え、小さな空洞から血が溢れ落ちた。

「・・・痛くはないな」

広がりかけていた血がふと固まったように止まり、沸々と泡を生んだ。

「お、おお・・・!」

老人は興奮せずにいられなかった。
今まさに見ているものこそが求めていたそのものだったからだ。

血泡は彼の足下へ集い、泥だらけの裸足を膝を辿り、穴の中へ戻っていった。
赤が黒へ、黒が白へ、青白い肌へ再生されてゆく。

「その力───わしのものじゃ!」

瞬時に無数の魔法陣が男の周囲に浮かび上がり、赤や青、緑と色様々に輝き出す。

それらを無表情で見つめる男。
焦りや恐怖も何も無い───有るのは・・・










「無駄だ」

闇に満ちた目が、顔を歪ませる老人を見下ろす。

「す、ばらしい・・・ちから、だ・・・」

両腕を両脚を失っても───否、取り返しても尚求める。

「・・・そんなに不死が欲しいなら与えてやる」

静かな、とてもとても静かな声が辺りに響く。

「───闇の中、でな」

取り返した際に腐ってしまい、骨だけとなった両手を伸ばし、目を見開く老人の頭を挟む。
すると、そこから水分を吸われていくかのように皮膚が干からびていく。

「好きなだけ生きるがいい」


───影が、闇が、広がる。
























───とある、廃城。
骸骨だらけの海の中。

ひとりの男だけが横たわっている。

彼は全ての後処理を終え、何かも無くなった。

目を閉ざし、どれぐらいそうしていただろう。


不意に、微かな風に紛れて甘い香りが訪れてきた。

「あら、素敵な闇ね」

開いた視界に映ったのは、鮮やかな赤の双眸。

「暇しているの? だったら、私たちの世界に来なさいな」

それはそれは真っ黒な闇と真っ赤な血に満ちた女。

「さあ、手を」



───骸影の不死は血闇の魔女に拾われ、また生きる事にした。

あちこちと彷徨いながら───・・・。










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