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闇が満ちるまで 2



二十歳だった尚耶は二十五歳になり、門派を卒業し武人としての任務をこなしながら仇を探していた。
その一年後、やっと仇を見つけ───復讐を果たした。
あっさりとしたものだった。
それほど尚耶が強くなっていたのもあるし、慎重に確実に復讐出来るように準備を重ねていたのもある。

それから尚耶はぼんやりとすることが多くなった。
念願だった復讐をやっと果たしたからだろうか、燃え尽きたかのように無気力状態になってしまったのだ。

ひと月ほど経っても全く変わらず、その夜も宿の借り部屋でちびちびとお酒を呑みつつ、ぼーっと夜空を眺めていた。

「にゃあん」

どこからともなく黒猫がやってきて、尚耶の足下へ擦り寄ってきた。

「お…可愛いにゃんこだな」

動物好きな尚耶は躊躇いなく黒猫を抱き上げた。嫌がる素振りもない黒猫はじっと彼を見つめた。

金目と青目が交わった瞬間───世界が変わった。

黒猫は跡形なく消え、薄暗い部屋から明るい野原に。
眩しさに目を細めていると、誰かがやってくるのを気配で感じた。

「なおちゃん」

その声で夢だと確信した。
何故なら───もう現実には存在しないものだから。

「……---」

口に出したのは幼馴染の名。
瞼を開けると、あの頃のままの彼女が微笑んでいた。
腰まで波打つ金髪と空のように澄み渡った青目の可愛らしい少女。

「───なおちゃん、ありがとう」

彼女の明るく喋りかける声が好きで、似た声を聞くと切なくなったものだ。

「私たちの無念を晴らしてくれて…」

昔よりもゴツゴツになってしまった手に、小さな手が触れた。
確かな温もりがあり、夢にしてはリアルな気がした。

「でも、これ以上…あなたを縛りつけたくない」

青目がふっと憂いに陰った。

「これからはあなたらしく、あなただけの人生を生きて…」

世界がまた変わった。夜へと。

「いつまでもお酒浸りはダメよ、もっと自分を大事にして…」

ふふっと小さな笑い声が朗らかな星空に響き渡った。

「だから、この想いはわたしが持っていくね」

彼女の顔が近づき、額に柔らかな感触と懐かしい甘さを帯びた香りが鼻をついた。

「さぁ、しばらく安らかに眠って───…」

至福なひと時に眠気がやってきた。
そこで不意にこう思った。

───こいつはあいつじゃない、別の誰かだ。

それでも包み込みこんでくる温もりは堪らなく優しくて、瞼が重たくなるのは止められなかった。

どう見てもあいつそのものなのに何故そう気づいたのかは分からない。
あえて言うなら長年狩人として培ってきた勘によるものだ。

世界がまた変化し、黒に覆われた。
それは夜ではなく完全なる暗闇。

───待って、くれ……君は…誰だ…?

彼女の頬へ手を伸ばそうとするが、それよりも意識が落ちる方が早かった。
全てが闇に満ちる直前、それが見えた。

きらびやかな金髪が風で舞い上がり、彼女の目が鮮やかに煌めいたのだ。

青から───赤へ。




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